世界で行われている紛争

Last Updated on 2024年5月15日 by aquase

○シリア内戦

今なお続く紛争の中でも甚大な犠牲者を出しているのがシリア内戦です。
その凄惨さは21世紀最大の人道的危機と表現されることもあります。

これでわかる「シリア内戦」の全貌〜そしてイスラーム国が台頭した

シリア内戦はチュニジアから始まったアラブの春がきっかけとなり2011年に勃発しました。
アラブの春では民主化を求めて人々が結束し国を大きく動かすという歴史的な転換を見せ、シリア国内でも事実上の独裁政権であるアサド政権への反発の動きが強まります。

人々の抗議が強くなるにつれてアサド政権と国民だけでなく世界を巻き込む紛争となりました。
アサドが大統領に就任したのは2000年からで、当時は政治的な腐敗と戦う姿勢を見せていました。

しかし次第に独裁者としての一面が濃くなり、権力保持のためならばシリア国民の生活を犠牲にするようになります。
アラブの春に感化された若者たちが中心となってアサド政権を打倒しようとしましたが、アサド政権は殺害など厳しい罰を与えました。

これを受けて多くの国民がアサド政権に反発するようになり、一部の地域は反体制派と同盟組織が統治するほど勢力が拡大しました。
反体制派・同盟組織とアサド政権・軍事化にある地域という構図が完成します。

○イスラム過激派組織であるISが介入

これらの対立が深刻化すると、イランやサウジアラビアなどの周辺国も他人事ではありません。
さらにシリア国内が混乱していることに乗じて、イスラム過激派組織であるISが介入します。

ISは彼らが理想とする国家を樹立し中東を支配するためならば手段を選ばないため、シリア国内で残虐な行為を繰り返しました。
世界の安全を揺るがすISが登場したことで、アメリカやロシアなど強大な軍事力を持つ国が介入せざるを得なくなりました。

アメリカなどの多国籍軍とロシアは空爆などでISを排除しました。
アメリカは反体制派、ロシアはアサド政権と支持するグループは異なりましたが、ISを掃討したいという目的においては利害が一致しており連携できました。

ISの恐怖から解放された後も、アサド政権による少数民族への武力行使など解決する見込みはありません。
シリア内戦で人道的な問題を指摘されるのは、アサド政権が国民の化学兵器を用いた可能性があるためです。

○民間人を大量に殺害し世界を震撼させた

戦闘員ではない民間人を大量に殺害することは世界を震撼させました。
関係ない人々の生活まで奪ったという問題は難民の数からも分かります。

シリア内戦では国民の半数が国外退去を余儀なくされました。
シリア難民の90%にあたるおよそ350万人はトルコにいますが、難民キャンプに収まりきっていません。

100万人以上のシリア難民はレバノンに逃げましたが、これはレバノン総人口の5分の1で生活するために必要なお金や物資を集めるのにとても苦労しています。

2015年には難民がヨーロッパに大量に押し寄せる事態に発展しました。
難民たちがヨーロッパで安定した生活を送りたいと考えるのは普通のことです。

しかしヨーロッパに住む人々は、たくさんの難民が国に居続けることに不安を感じる結果となりました。
多くの難民を受け入れる国では彼らに物や仕事が奪われる恐れがあります。

○宗教問題も絡んでおり紛争が長引いている

自国の問題は自分たちで解決し、他国の問題は他国の中だけで解決して欲しいという自国第一主義が広がるようになります。
この頃からヨーロッパ各国では保守的だったり愛国心に溢れていたりする政治家が当選し始めました。

難民が押し寄せることで国が混乱する状況は現在は落ち着いていますが、世界的に難民が溢れかえっているのは変わりません。
国内に残ったシリア人はいつ武力攻撃によって命を落とすか分からない環境に身を置いています。

一見反体制派とアサド政権という単純な構図ですが、宗教問題も絡んでおりこの紛争を長引かせています。
イスラム教には大きく分けてスンニ派とシーア派があり、アサド政権はアラウィー派というシーア派に属します。

よってシーア派が多数派であるイランはアサド政権を応援しています。
トルコやサウジアラビアなどはスンニ派でイランと思想を共有できないため、イランの弱体化を狙って反体制派に付きました。

○独立のための戦いと捉えているクルド人

このように周辺国の勢力争いも関係したことで、お互いが支援するグループに物資などを供給することでいつまでも戦うことができます。
また少数民族であるクルド人はこの紛争を独立のための戦いと捉えています。

彼らはアメリカが創設した有志連合に協力部隊として尽力し、ISと真っ向から戦いました。
クルド人勢力はISに抵抗することで、テロと戦うことを世界に示し軍事や外交を確立しようとしていました。

しかし当初テロとの戦いはISだったのに対し、アメリカはイランへの強硬な態度という形でクルド人勢力の思惑をねじ伏せ独立は成功しませんでした。
一方でトルコにとってもクルド人勢力が力を付けることは危険因子なので、ISというテロとの戦いとクルド人勢力に向かうように利用しました。

日本ユニセフも警鐘を鳴らしていますが、このように各国が利益のために戦争を続けているため、シリア内戦は複雑化し収束していません。

出典:日本ユニセフの評判や口コミは?